腹腔鏡下手術とは、胃カメラや大腸カメラを用いて、ポリープや腫瘍を切除する消化管内視鏡治療と異なり、外科医によって行われる低侵襲でより負担の少ない手術です。従来は、お腹を大きく切り開くことで胃、大腸、胆嚢、膵臓や肝臓などの臓器を手術し切除していましたが、近年では多くの手術が腹腔鏡下手術で行われるようになりました。
腹腔鏡下手術では、お腹の小さな創から空気を入れてお腹を膨らませ、腹腔鏡というカメラを用いて、お腹の内部の状態を外のモニターに映し出します。さらにいくつかの小さな創から、箸の太さ程度の長い手術器具を挿入して、外からの操作によりお腹の中の手術を行います。
腹腔鏡下手術は、1980年代後半から欧米を中心に広まり、日本では1990年より胆石症に対する胆嚢摘出術が導入されました。その後、腹腔鏡下胆嚢摘出術は日本中に広まり、今では腹部領域においては、消化器外科だけでなく、泌尿器科や婦人科でも様々な疾患に対して腹腔鏡下手術が行われるようになっています。
当院では、腹腔鏡手術を発展させたReduced port surgery(RPS)にも取り組んでいます。一般的に、腹腔鏡手術は5-6ヶ所の穴(1-2cm)を開けて行うことが多いですが、RPSは穴の数を減らしたり、穴の大きさを小さくしたりして行う腹腔鏡手術のことです。
RPSは患者さんの手術後の疼痛の軽減、術後の早期回復、および整容性の向上につながると考えられています。虫垂炎や胆石症などの良性疾患や、一部がんの手術に対しても施行しています。しかし、特にがんに対しては手術が治療を左右することがあるため、手術の質が最も大切だと考えています。手術の質が担保された上でRPSを行うことができれば、患者さんのメリットは大きいと考えています。がんの進行度やがんの部位、内臓脂肪の多さなどRPSに適さない場合もあるため、全ての方に行えるわけではありませんが、可能な限り取り組んでいます。希望される方は担当医へご相談ください。
腹腔鏡下手術には以下のような特徴があります。
ただし、以下のような短所もあります。
この30年間の腹腔鏡下手術の進歩で、より安全な手術が行われるようになっています。しかし、内視鏡外科医の存在、内視鏡外科に必要な機器やチーム体制が十分かどうかにより、地域、施設間の格差があるのは否定できず、また施設によって手術適応や手術時間などが異なっているのも現状です。 その点、当院においては、現在3人の日本内視鏡外科学会技術認定医(腹腔鏡下手術の指導医)を中心に、多くの外科スタッフが存在し、幅広い外科疾患に対応可能な十分な体制がとられております。
新病院移転後も、手術件数は増加傾向で、2021年には消化器・乳腺外科で1200件弱の手術を施行しており、これは地域の市中病院としては全国的にもかなり多い手術件数になります。また、成人の鼠径ヘルニア診療においては、神奈川の総合病院でもトップレベルの診療実績があります。今後も当院は、地域における外科診療の重責を担う立場にあり、日々さらなる手術技術や診療技術の向上を目指し、より患者さんの立場に立った医療を実践していきたいと考えております。
当院は、地域医療支援病院として、地域の医療機関と日ごろから連携体制を構築しています。診療において紹介患者さんを優先させていただいております。患者さんにおかれましては、この趣旨にご理解いただき、当院を受診される際には、かかりつけ医や他医療機関などからの紹介状をお持ちいただけるようお願い申し上げます。
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